「人はどうしたら幸福になれるか」とか、
「元気で暮らして、ある日突然コロリンと終わりたい」
そういうテーマには興味がありますので、放送されたものを文字に起こしてみました。

2018年3月5日(月)〜3月9日(金)放送
順序を変えて、最初に結論のD、そして@ABCの順番に書いていきます。



D孤独を愛する人へ


予防医学研究者 医学博士 石川善樹さん

人とのつながりが寿命を延ばすということでみてきましたけれども、ただ一方で「人つきあいが苦手である」という、「孤独が好きなんだ」という人がいます。これはどう考えたらいいでしょうか。

私のまわりにも、人とつきあうのが苦手で、できれば一日中ひとりでいたいという人は確かにいます。

研究者がこれまでに調べたところによると、実は「孤独遺伝子」というのがあるということが知られています。

この遺伝子を持っている、人から離れて、なるべく一人になりたいという遺伝子です。

この孤独遺伝子というのは、ある人は持っていて、ある人は持っていない、というそういうたぐいのものなんですか。

そうですね。
なんで孤独遺伝子があるのかというのは、実は大きな謎でして、今回のシリーズで述べていますように、基本的には人とつながった方が、幸せになれるし、寿命は延びるし、人類として生き延びる確率はあがるのです。

その中で、何で孤独遺伝子みたいなものがあるのかというのは大きな謎だったのですが、最近ひとつの仮説が提唱されています。

それによると、たとえば集団として暮らしているときに、何か感染症が流行ったときに、その集団は絶滅してしまうわけですね、そういうリスクを避けるためには集団から飛び出て、一人違う場所にポツンと行くような人というのは必要になってくるわけです。

そう考えていくと、人類が中、長期的に生き延びる、新しい土地をどんどん開拓して広がっていくためには孤独遺伝子というものが必要だったんじゃないのか、ということが最近提唱されています。

例えばアメリカ人なんかはイギリスとか、いろんなところからやってきて、新しい土地を開拓していったわけですが、彼らは孤独遺伝子や新しいものをどんどん追い求めていくという遺伝子が強いということも言われています。

孤独な人は寿命が短いのかというと、そうでもないんですよね。

そうなんです。孤独な人たちは全体として寿命が短いんですけども、ひとりひとり見ると、たとえ孤独であったとしても長生きする人というのはもちろんいます。タバコを吸っていても長生きする人がいるのと同じように、たとえ孤独であつたとしても、長生きする可能性というのはもちろんあります。

これは教育も同じだと思います。たとえは片親の人というのは、片親で育てられると社会的成功がしにくいというのが言われるのですけれども、例えばオバマ大統領とかクリントン大統領というは片親なんですね。

それでもあれだけ成功しているので、必ずしも何かひとつの要素で、すべての物事が決まるということはないんです。私たちが人生を生きる上で、健康であるとか、社会的成功というものなど様々な要因が複雑に絡み合っていることを理解しておくといいと思います。

ただ、一方でやはり人とのつながりが寿命を決めるひとつの大きな要因なっているということですよね。孤独が好きな人はどうすればいいんでしようか。

人つきあうのが苦手、好きではないという人は無理に人と接触するとストレスになると思います。なので、できる範囲から徐々にやっていくのがいいんじゃないかなと思います。

たとえば私の知り合いの方に定年退職された後、地域のお祭りを組織する会にはいりませんかという誘いをいただいたんですけれども、やはり付き合いがない人と付き合うのはたまらんということで遠慮していたんですね、ただ、お祭りというのはどんなものか、とりあえず行ってみようと、参加することからはじめたんです。

するとにぎやかな雰囲気で楽しいと、それを2年、3年とつづけていくうちに、その方はお祭りの委員会の方から「毎年来ていますね」というふうに越えをかけられた、そこで話合うようになって、気づいたら、いつのまにかお祭りを組織する側にまわっていたというケースがありまして、

そういうふうに最初は無理に接触しなくてもいいので、その場の雰囲気にまず入つてみる、馴染んでみるところからはじめられるのがいいんじゃないかなと思います。

昨日のお話で、幸福度は50%は遺伝によって決まるんだという話でした。でも残りの50%は、その人の行動ですとか環境によって変わるんだということでした。この孤独についても同じことが言えますか。

そうですね。遺伝子ですべて決まるということはもちろんないわけで、環境であるとか、自分のちょっとした行動であるとかで、様々なことが変えられるということだと思います。

最後にあらためて重要だと思われることを上げていただくとしたらどんなことでしょうか。

テレビ、ラジオを聴いていると、日々様々な情報がはいってきます。これを食べると健康に良いとか、あれを食べるとやせるよとか、そういう様々な情報が出てくると、時に混乱することさえあるんですね。その時に何が大事なのか、考えてみると、そういう新しい情報について行くということももちろん大事なんですけれども、それ以上に大事なのは、自分はこれまでなぜ元気で来れたんだろうか、というまず、自分自身を振り返ってみることが非常に大事だろうと思います。

私は健康教室を各地でやらしていただくのですけれども、そこにいらっしゃる方々、とくにお年寄りが多いのですが、なぜこれまで元気に来れたんですかと聞くと、「特別なことはしてないよ」とおっしゃる方が多いんですね、しかし、よーく話を聞いてみると、本人は特別と思っていないんですけれども、当たり前にやっていたこと、あるいはしてもらっていたことが、実は自分の健康に気を使っていたんだなあと気づかれた方が多いんです。

それは例えば、奥さんが毎日、健康に良い食事を作ってくれていたとか、あるいは毎日畑仕事をしていたこととか、そういう何でもない、特別じゃないことが、実は自分の元気につながっていたということがよくあります。

なので、そういう新しい情報に振り回されるんじゃなくて、まさに自分自身を振り返って、なんで自分は今日まで元気に来られたんだろうかとか、それを大事にすることが、実は自分の健康づくりにいちばん効くんじゃないかというふうに思います。

まずは自分の足元の生活を見つめてみる、と、そして良いところを伸ばしていく、それがまずあって、その上で新しい情報を自分自身に合った形で取り入れるというこなのかもしれませんね。




@人とのつながりが寿命を延ばす。

「人とのつながりが寿命を延ばす」と題したシリーズの再放送をお送りします。
人とのつながりが寿命や健康に大きく関係するという研究結果がこれまでに次々と発表されています。どうして「つながり」が健康と関係するのか、どのようなつながり方が健康により良いと考えられているのか教えていただきます。お話は予防医学研究者で医学白紙の石川善樹さんです。一回目の今朝は「人とのつながりと寿命」というテーマでお話いただきます。人とのつながり方が寿命と関係してくると聞きますと、ちょっと意外な感じもするんですけど、色々な研究でそれが示されているそうですね。

はい、そうですね。あまり聞きなれないお話だと思います。最近の研究によって、つながりが寿命に影響してくるということがわかってきました。

まず、20世紀を振り返ると、日本人の平均寿命は、だいたい30年くらい伸びています。これは世界の他の国を見てみてもすごい伸び方です。理由は大きく3つあるんですけれども、ひとつ目は戦後すぐの頃というのは結核だとかあるいは乳幼児の死亡率がたかいというのが主な原因で、そこを克服できたというのが、寿命の伸びにきいてきたと、その次に日本人が克服したのは、脳卒中による死亡率ですね、これに大きく貢献したのが冷蔵庫であると言われています。どういうことかというと、脳卒中の原因というのは塩分というのがひとつあるんですけれども、冷蔵庫がある前は保存食を日本人は食べていたんですね。冷蔵庫が出てることによって、新鮮なものが食べれるようになって、塩分が減って、脳卒中が減るというのが2つ目の原因と、3つ目が人とのつながりというお話なんです。

もともと日本人の寿命の研究をしている人たちがいて、有名な方にイギリスのマーモット先生という方がいます。
著名な予防医学の先生なんですけども、彼が注目したのは日本とイギリスを比べたときに、どう考えてもイギリスの方が医療レベルが高いのに日本人の方が寿命がどんどん伸びているという事実に気が付きます。

なんでなんだろうかということを研究するために日本人を対象として調査研究を行いました。具体的には日本人の移民研究をしたんですけれども、日本からハワイに行って、ハワイからサンフランシスコに行ったことで移民して行った人たちがいまして、調べてみると日本から離れるにつれてどんどん死亡率が上がっていっていたんですね。日本にいる人がいちばん元気で次がハワイのホノルルに行った人、いちばん死亡率が高かったのがサンフランシスコに移り住んだ人たち。

なんでこんなことが起きるんだろうか、同じ日本人の遺伝子を持っているのに何でこんなに違うんだろうかと思って調べてみると、食生活だとか、運動しなくなるとか、そういう理由はあったんですけれども、いちばん大きかったのは「つながり」なんじゃないだろうか、ということをマーモット先生は述べている。その研究成果を「なぜ日本人は長生きなのか」という論文として発表したところ、世界的な反響を呼んで、では「つながり」ってなんだろうか、というところの研究が進んでいくことになります。

いわゆる生活習慣病とかメタボとか言われるものは原因がたくさんあります。運動、食事、あるいはタバコ、それらを比較してみたときに、結局何がいちばん効いているんだろうか、ということがわかりはじめたのが21世紀にはいってからなんですね。

それを見てみると、はじめはたばこがいちばん大きいんじゃないかというふうに思われていたんですけれども、調べてみるとタバコよりも「つながり」がないこと、あるいは孤独であることが健康に悪いと、つまり孤独はタバコよりも健康に悪いということがわかってくるわけです。

これは、どうしてそういうことが起こると考えられるわけですか。

一番大きいのは、ストレスを解消するのに「つながり」が役に立っているんじゃないだろうか、ということが言われています。

どうしても一人だとストレスを抱え込んでしまうんですけれども、いろんな人とつながっていると、そのストレスを解消する手段が持てると、そういうメカニズムがあるんじゃないかなあと言われています。

もうひとつ大きなメカニズムで言われているのは、人とつながりを持っていると人生に張り合いが出てくる、域外だとか、やりがいだとか、責任感、こういったものが出てきたことによって、結果として元気に長生きできるんじゃないかということが言われています。

あと、もうひとつ、自律性、自分でコントロールするという意味の自律性ですけれども、これも大切な要素だそうですね。

はい、そうです。これを発見したのはハーバード大学で最も長い間教壇に立っている心理学の先生がいるんですけれども、彼女が1970年代に、こんな実験をします。老人ホームにいる方々を対象にして植物の世話をしてくださいというお願いをしたんですね。

で、老人ホームに住んでいる人たちを半分に分けて、ひとつのグループは植物の世話を自分たちでするグループ、もう半分は老人ホームのスタッフの人たちが世話をする、そうしてみると、その後追いかけてみると、自分たちで世話をした方が寿命が倍伸びていたんですね。ここからわかったのが、自分で何か物事をコントロールしている感覚、自分で責任を持って何か物事をやり遂げるということが実は寿命に相当効いてくるんじゃないだろうかという仮説が提唱されはじめています。日本人の場合も、たとえば仕事をずーっと持って暮らしている方というのは長生きであるということが知られていて、例えば農業とか、あるいは漁業をやられている方、林業をやられている方というのは張り合いがあって長生きなんですね。

今、その自立性を持った生き方が寿命を延ばすのに効いてくるんじゃないかという研究が進められているんです。例えば、厚労省は細心の健康戦略として「健康日本21」というのを発表しています。その中ではですね、今後健康で長生きであるために何をしたらいいのかということを述べられているのですけれども、ちょっと前までは運動であるとか食事であるとかタバコというのが大きなキーワードでした。

でも、このたび新しく更新された「健康日本21」では「人と人とのつながり」をすごく重視するとか、あるいは「はりあい」とかでもって「自律性」をもって人生をいきていく、と、そういうキーワードがはいってきて、国の方でも動いているというところですね。

先ほどもおっしゃっていたように健康とか長寿というのは様々な要素が関係していると、タバコですとか、メタボの予防も重要ですけれども、それに加えて「つながり」とか「自律性」ということも大きなキーワードになってきているということですね。




A所属先の数が寿命を決める

2回目の今朝は「所属先の数が寿命を決める」というテーマでお話いただきます。
人間はどれくらいの人とつながりが持てるのか、脳科学の分野から迫った研究があるそうですね。


脳の大脳新皮質と呼ばれる部分がつながりの数を決めるということがしられています。大脳新皮質というのは脳の中でも一番最後に発達した部分で、理性とか想像性であるとかいった人間が人間であるようなも、そういう部分をつかさどっているような部分でありますけれども、脳全体に占める大脳新皮質の割合でつながりの数が決まるということが研究でわかっています。これを調べたのはイギリスのロビン・ダンパーさんという方なんですが、様々な動物を対象に研究をしたところ、脳全体に占める大脳新皮質の割合が非常に少ない、例えば、手長ザルというのがいるのですが、この場合はおよそ2%くらいで15頭くらいの群れをつくると、もう少し大きいゴリラなんかは2.7%の割合で35頭のつながりを作る、もっと大きいチンパンジーの場合は3.2%で65頭程度なんですが、群れの数と脳全体に占める大脳新皮質の割合でつながりの数がきれいに相関することが知られています。人間の場合は、その割合が4.1%程度で、つながりの数で言うと、だいたい150人くらいというのが人がつながれる限界の数値であろうということが言われています。これはづっさい様々な組織で確認されていて例えば軍隊の場合はいっしょに行動したりとか侵食を共にする最大の人数というのがだいたい150人くらいというふうに言われています。企業なんかでも150人を超えてくると部署を分けないといけないとか、会社そのものを2に分けてしまおうとか、そういうことが知られています。人間が他の動物と最もちがうのは環境に適応して生き延びていくとこが最も優れているんですけれども、そういう意味で言うと、たくさんの人とつながっていた方が、いろんな情報の交換ができたり、実際に子供を産むというときにいろんなパターンが生まれてくる可能性があるので、そういう意味で言うと結果的に人類が生き延びるという点で有利に働いたんじゃないかということか指摘されています。

それは現在にも言えるそうでして、人は職場とか、いろんなグループとかサークルなど様々な場所に所属しますけれども、その数と寿命との関係も明らかになってきている7そうですね。

そうですね、友達の数が多い、あるいはどれだけの人数の人とつながっているのかというのが寿命と関係してくることが研究の結果わかってきました。たとえば、日本の場合は65才以上の高齢者、約20万人をずーっと追いかけている調査があるんですけれども、これは千葉大学の近藤克則先生という人か主任研究者としてやられているJAGESというプロジェクトなんですけれども、どういう特徴を持った人が介護状態になりやすいのか、あるいはどういう特徴を持った高齢者が亡くなりやすいのかということを調べることを目標にしています。

結果はどうだったんでしょうか。

非常におもしろいことがわかったんですけれども、結論として、所属している組織の数が多ければ多いほど介護になりにくいということがわかってきました。もっとおもしろかったのは、所属している組織、例えば自治会とか老人会とか3つ以上になると介護になる確率が22%減るという研究結果がでています。一方で、所属している組織が全くない、あるいはたったひとつとか、2つとかは介護になりやすさの確立はほとんど変わらないという結果が出ました、要は介護にならずにぴんぴん生きていくためには3つ以上の何らかの組織に所属することが大事であるということが結論として出ています。なんで1個とか2ことかではだめなのかというと、なせ3つ以上なのかということを考えてみますと、まずひとつは、たくさん組織に所属していると、それだけ外出する頻度が増えるので体を動かす機会が多いということが考えられます。2つ目の理由としては、たくさんの組織に所属することで、より自分の人生に張り合いとか生きがいが出てくるんじゃないか、3つ目の理由としては、もし1個だけの組織に所属していると、そこの人間関係がぐちゃぐちゃすると、よけいストレスを感じてしまう、ここで2つも3つも所属していると、おそらく1つの組織ぐらいはうまくいかないということもあるんでしょうけど、たけど他の組織に行くと、また違った自分に成れるでしょうからリラックスできるでしようから、そういうことがあるんじゃないかなあと考えられます。

あと、人とのつきあいということで言いますと、親しく付き合う、親友という結びつきもありますよね。これについてはどう考えればいいんでしょうか。

それも実はおもしろい研究がありまして。昔から親友といわれるような親しい人は、だいたい6人から8人が限界じゃないかというふうに言われています。それはですね、フェイスブックとかツィッターとかいったインターネットを通して人とつながりもできているんですけれども、それでもやっぱり6人から8人ぐらいというのが親友と言われる数の限界だろうというのが研究の結果わかってきています。この6人から8人の親友をどう持つかというところが健康にも影響してくるということなんですけれども、先ほどいろんな組織に属しているという話がありましたけれど、おそらくひとつの組織ですべての親友をそこに作ってしまうと何かあったときに逃げ場がなくなるんですね。なので、いろんな組織にちょっとずつ、1人か2人ずつ親友を作っておくと、何か困難があったときに、自分に危機が訪れたときに救ってくれるんじゃないかなというふうに考えられます。

親友というのはどういうバロメーターではかればいいんですか。

そうですね、いちばんわかりやすいのは、自分が入院したときに何回もお見舞いに来てくれる人というのが、おそらく一番の親友なんじゃないかなというふうに思います。

逆に言うと、誰かが入院したときに、何を置いてもまずお見舞いに行きたいなと思える人。

そうですね、遠慮とか、あるいは忙しいからという理由で、なかなか何度も足を運ぶというのは難しいと思うんですね、しかし一度ではなくて2度も3度も足を運びお見舞いに行ってあげたいと思うような、そあいう人が自分の親友になるんじゃないかなあと思います。

よくわかりました。今朝の話どうもありがとうございました。




B世話役をやると寿命が伸びる。

世話役とかリーダーなどをするかどうか、これが寿命と関係してくるという研究結果があるそうですね。

私がまさにその研究をしているのですけれども、健康作りをしているとたとえば地域には必ず健康作りの推進委員会みたいなものがあります。そこで必ずもめるのが誰が代表をやるのか、副代表をやるのかということで皆さんやりたがらないですね。なぜかというと責任感もあるし、わずらわしいことも多い。

そういうことを見ていますと、会の役員になるということはストレスとか責任も多いので寿命が縮むんじゃないかという形のもとに研究をしてみました。

初日に話ましたJAGESという65才以上の20万人の方を追いかけている調査で検証したところ仮説とは逆に、所属している団体の役員になった方がむしろ寿命が伸びるという結果が出てきました。

男性が役員になると死亡率は5%減、女性の場合は役員に着くと、17%も死亡率は減るという結果が出てきて私たちもびっくりしているところです。もう積極的に会長に立候補すると健康長寿になる可能性が高いということですね。

どうして、こういう結果になったと考えられるのでしょうか。

初日にも話したんですけれども、自律性という言葉と関係してくると思います。

自分で行動をコントロールできるかどうかということですね。

そうですね、ある会に所属したときに、平のメンバーであることと、あるいは役員になることの一番の違いは、役員の方がいろんな物事をコントロールできるわけです。平のメンバーだと、やはり言われたことをやるだけだったりとかするということが多いかと思うんですけれども、役員に着くと、自分で会の運営をやらなきゃいけないんだとか、何をやって何をやらないのかということを決める自律性を持ってるんですね、その感覚というのが寿命に効いてくるんじゃないかということが言われています。

その自立性を持つことで生きがいとか、あるいは責任感というのが当然生まれてくるんですけれども、昔から「生きがい」を持った人は長生きだということが知られていまして、ですが、なぜそうなのかというところは今まさに研究が進んでいるところです。

たた事実としてそういうデータがあるということですね。

そうですね。

どんな団体に所属するのがいいんでしょうか。

とくにいいのが趣味の会とスポーツの会なんですよ。とくにスポーツの会は一人でやるスポーツのものと団体でやるスポーツのものがあるんですけれども、これも研究してみますと、他の人といっしょにやるスポーツの会に所属した方が長生きであるという結果がでています。

具体的にはどんなスポーツですか。

人と競い合ってやるよりもみんなといっしょにワイワイ仲良くやる、そういうスポーツがいいと言われています。たとえば太極拳とかヨガとか、あるいはラジオ体操みたいなもの、とくに勝ち負けを目的としないもの、みんなで集まって体を動かすものというのがいいと言われています。

男性の場合だと武道なんかがいいんじゃないかと思います。どうも、武道をやる人というのは脳が良く発達すると言われています。なぜなんだろうかとみてみると、呼吸法が武道の場合特徴的でして、ゆっくり息を吸ってゆっくり吐くということをするんですが、この呼吸法が脳に良い影響を与えているんじゃないかということが言われるようになりました。

これはお年寄りだけではないと、考えてよいわけですね。

そうですね。子供もその影響があるとみられています。とくに武道をやっている子供は脳の発達が良いということが言われています。記憶力が上がったり、あるいは論理的に物事を考える力がついたり、この理由のひとつとして武道特有のゆったりと行きを吐くという呼吸法ですね、それが効いているのではなかろうかということが言われています。

たとえば、お坊さんが修学旅行の学生を受け入れることがあるんですけれども、座禅を組んでもらって子供たちの様子を見ると、どの子が成績が良くて、どの子が成績が悪いか、すぐわかるというのですよ、どうやって見ているかというと、座禅を組んでいるとふらふらと体がゆれたり寝たりする子がいるんですけれども、そういうのは見ていないんです。でも呼吸のリズムが一定かどうかを見ることで子供の成績の良しあしがわかるというのです。

だいたい呼吸のリズムが一定で10分20分30分と座禅を組めるこどもは集中力もあって成績もよいと、でも成績が悪い子はすぐに呼吸のリズムが乱れるというのです、ため息をついたり、そういう子というのは

もちろんスポーツをするということが良いのでしょうけれども、申す事手軽に日常生活の中で手軽に呼吸法を整える方法というのは無いのでしょうか。

日常生活でやられるんであれば、明治大学の斎藤たかし先生が提唱されている3:2:15の呼吸法というのをやるのがいいと思います。3秒吸って2秒停めて15秒かけて吐くと、息はゆっくり吐いているとセロトニンと呼ばれる幸福物質、幸福ホルモンと言われるものが出てくることが知られています。

これが出てくると記憶力の向上につなかったり、あるいはストレス軽減につなかったりということで、ゆっくり息を吐くとセロトニンという幸せホルモンが出る。

前日の話にもありましたけれども、何かひとつの要因だけで長寿が決まるわけではない。その中で世話役をやるのかどうか、また団体に所属するならどんな団体にはいるのがいいのか、そんな視点をもつてみるのもいいということかもしれませんね。





C幸福度と寿命

4回目の今朝は幸福度と寿命というテーマでお話いただきます。
幸せだと感じる、いわゆる幸福度、これと寿命が関係しているそうですね。

そうですね。幸福度が高い人の方が寿命が伸びるということが、だんだん最近わかってきました。これがなぜなのかというところの研究も今進んでいるんですけれども、ひとつは困難を乗り越えやすくなるんじゃないのかということが言われています。

生きていると配偶者を失くしたり、あるいは乳児をなくしたりというような困難があるんですけれども、そういうときに幸せなひとポジティブな人は他の人の助けを得られやすいとか、ポジティブであると視野が広がるので困難を乗り越えていきやすいというようなことが言われています。

幸福度をあげるためにはどうしたらいいのでしよう。

そうですね、これは非常におもしろい研究があるんですけれども、私たち研究者の仕事は物事を定量化することなんです、どういうことかというと、幸福度にはどういった要因が何パーセントくらい影響しているんですか、ということを研究しています。幸福の場合は遺伝というものが非常に強く影響していることがわかってきていて、だいたい幸福の50%くらいはほぼ遺伝できまっているということが解るようになってきました。
だから例えば世の中にはご機嫌な人と不機嫌な人とがいるんですけれども、だいたいご機嫌なひとの家族を見ると、だいたいご機嫌なんですね、逆に不機嫌な人は家族も不機嫌なことが多いということが多いんです。

どんな研究でそれがわかるんですか。

双子を対象にした研究をしています。

双子ですか。

そうです。双子というのは2人育てることができない家庭というのがあるので、片方の子が他の家庭に養子としてもらわれることがあるんですね。そうすると、遺伝はいっしょなんだけれど環境が違うとか、そういうことがわかってくるので統計的に調整をして幸福に遺伝がどれだけ効くのかということを導きだします。

その人の幸福度が遺伝、生まれ持った性格で50%決まってしまう。これはどう考えたらいいんでしようか。

そうですね、この50%は大きいと思う方がほとんどではないでしょうか。一方で50%の幸福度というのは遺伝以外の要因、例えば環境であるとか行動で変えられるというふうに考えられます。つまり、50%遺伝で決まっているからといつて悲観的になるのではなくて、残りの50%は自分の努力で環境や行動を変えられることで幸福度を変えていくことができると、そういうふうに考えていただければと思います。

例えば、孤独な人というのは部屋に行ってみると非常に汚い事が多いんですね。部屋が散らかっているというか、散らかっていると、なかなかそう友達を呼ぶこともできなくなってくるんですけれども、例えば自分の部屋をきれいにするということ、非常に基本的なことなんですが、そういうことで友達も呼びやすくなる、で、幸せになる可能性が上がっていくということがあります。

そういえば精神的な疾患も環境を整えるというところからアプローチすることがあるんだと聞いたことがありますね。

そうですね。昔は考え方を変える、環境よりも自分の考え方を変えるというふうにアプローチが進んだんですけれども、自分の考えを変えるというのはとてもむずかしいんですね、なので最近は環境であったり、考えではなくて、自分の行動を変えることで結果として考え方が変わるというふうに移ってきています。

たとえば嘘でもいいから、よく笑えと言いますよね。あれって効果あるんですか。

すごい効果あります。作り笑いであるとか、あるいは下でなくて上を向く、そういう単純なことをすると、それだけで気分が盛り上がってくるということが、やってみたらすぐわかると思うんですけれども、あるいはガッツポーズをしてみたりとか、そういう自分の行動を、嘘でもいいからやってみると気分が盛り上がるということが知られています。

今回のテーマで言いますと、環境を整えるという意味では、つながりによって幸福度を変えていくということはできるんでしょうか。

ありますね。幸福とつながりについても、いろいろな研究が行われているんですが、それらの研究が一貫して示しているのは、幸せな人は友達の数が多いということに尽きます。つながりの質ということももちろんあるんですが、例えば深い関係を築けているか、とてもとても仲良しかということがあるんですけれども、質というのは、そこまで影響していなくて、幸せな人は、とにかくつながりの量が多いということが知られています。ひとつには、幸福というのは人と人との間で伝染しやすいということがあります。

これはアメリカの研究なんですけれども、12000名の方々を32年間ずーっと追いかけた研究があります。その中で誰から誰に幸福度が伝染しているのかしらべたも、例えば自分の友達がひとり幸せになると自分は9%幸福度がアップするということが確認されました。

また一方で自分の友達が不幸になると自分の幸福度は7%下がるということが示されています。つまり、幸せの方が不幸せよりも感染力が強いんですね、なのでたくさんの友達に出会っていた方が確率的に幸せになる可能性が高いと、そういうメカニズムが提唱されています。

そのほかに幸福度を上げていくために我々ができることは何がありますか。

幸福度を上げるために何をしたらいいのかということを国家として取り組んでいる国があります。イギリスです。イギリスでは5つの行動を提唱しています。
1つは運動するということ、運動すると脳内で幸せを感じるベータエンドロフィンが出てくるので幸せになりやすいんです。
もう一つが感謝をするということ、感謝の訪問という手法があるんですけれども、長年お世話になっているんだけれども、キチンと感謝を言えていない人に対して、手紙とかで感謝の気持ちを述べるのではなくて、その人の目の前まで行って感謝を述べるという手法です。直接面と向かって感謝を述べるということをすると幸福度があがるということが知られています。
あるいはイギリス政府が提唱しているのは、人とつながるであったり、
何か新しいことを学ぶ、あるいは人に感謝を与えるということですね。運動、感謝、与える、学ぶ、つながる、この5つの行動が幸せにつながりますよ、ということをイギリス政府は提唱しています。

これは心理学の研究で十分確かめられたことなので、今やられているということなのですね。
運動する。感謝をする、つながる、学ぶ、与える。
どれかひとつでも初めてみるのがいいのかもしれませんね。ありがとうございました




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